ボートレースの予想を組み立てるときに、1枠の逃げが成功するかどうかを予測することは、他のどの要素よりも舟券の組み合わせに影響を与えます。
舟券のオッズはほぼいつも1号艇を中心に売れており、逃げが成功するオッズは低く、逃げが失敗する=1号艇以外が勝利するオッズは高くなります。自分の舟券を1号艇中心に組み立てるのかどうかで、的中したときのリターンと的中確率は大きく変わります。ベットするとき、まずは1号艇を頭に据えるかどうかを決める、という人は多いのではないでしょうか。
その1枠が逃げて勝利する確率(イン逃げ決着)というのは、ボートレース全体だと50%を少し上回るくらいの割合となっています。逃げ以外の抜きや恵まれで勝つケースが加わると、1号艇が1着となる割合は約55%となります。その次に続く2号艇が勝利する確率は約14%、その次が3号艇で約12%、というように枠別で見ると1号艇の勝利確率は他に比べて圧倒的です。
この逃げが成功する見込みというのがどのような要素・条件で変動するのか、ということをこの記事では紹介します。
もちろん逃げが決まるかどうかを決める一番大きな要素は1号艇に入ったボートレーサーの力量、ということになるのですが、それ以外にボートレース場や風向き・波の高さなど、レース環境によって逃げが成功する見込みにどのような影響があるのか、ということを2021年5月から2022年4月まで1年分の競艇レースデータ(約5.5万レース)を使って分析します。
イン逃げデータ分析 記事のサマリ
- ボートレース場でイン逃げ決着割合は20%変わる
- 水質でボートレースの決まり手は変わるのか
- 暑すぎず寒すぎず、レーサーの力が発揮できる温度でイン逃げは安定する
- 高い波ではレーサーの技術が重要
- 風速が強くなればイン逃げ決着は減る、どの風向きであっても
- 勝率がレースのイン逃げ成立に影響するのは1号艇だけ
- 2号艇の逃げ阻止失敗実績は部分的に1号艇の逃げに影響する
BKCでは、毎日更新しているデータ分析ページで全レースの逃げ成功見込みを掲載しています。
この逃げ成功見込みの指標は、ここで紹介するレース環境のデータや出場するボートレーサーの枠別成績・過去レース決まり手の割合などを使って算出しているBKC独自の指標です。
データ分析ページでは、1号艇が過去のレースで逃げを決めた割合や、2号艇が1号艇の逃げで敗れた(逃げが阻止できなかった)割合といったものも掲載しています。そういったデータも総合的に取り込んだ「BKC逃げ成功見込み」なので、この指標があなたのボートレース予想に必ず役立つものになっていると信じています。
ぜひBKCのボートレース予想用データ分析ページをお役立てください。
競艇場別のイン逃げ成功見込み 知っておくべきレース場の特徴とは?
全国にボートレース場は24箇所あり、それぞれのレース場で年間2000回を超えるレースが開催されています。その24箇所それぞれでレースの傾向が異なり、逃げの成功見込みにも特徴が出ます。
競艇場ごとにレース傾向が現れる原因は様々です。ボートレースで航走する距離は1マークから2マークまでが300mというのが決まっているので、全ての競艇場で1周600mと共通ですが、1マークから先の奥行きや進行方向と垂直向きの水面の幅など、水面の形状・広さはレース場によって異なります。
レース場の水の質にも種類があり、海水・汽水・淡水と水の塩分濃度で分類されています。これもボートの乗り心地やモーターの回転に影響を与えるようで、同じ競艇選手でも海水が得意なレーサー・淡水が得意なレーサーといった具合に、レース場によって得手不得手というのが起こります。
立地によって風の強さや波の大きさというのもレース場ごとに特徴があり、これらの特徴というのが複雑に絡まってレースの傾向に現れてきます。
また、レース場自体の影響以外にも、レース主催者がある程度意図的にレース傾向を方向付けるといったこともあります。
一般戦でおこなわれる企画レースと呼ばれるレースでは、例えば第5Rを進入固定指定レースにしたり、第1RはA級選手を1号艇にしてそれ以外をB級にする、といったことを行っているレース場があります。レースの番組表(どのレースに誰がどの枠で出場するか)は主催者であるレース場が決めるので、1Rから12Rまでのメリハリを付けて盛り上げる施策の一つとして、企画レースの指定ということが行われています。
企画レースは、一般的にレースの傾向を予想しやすくなるよう仕向けられています。進入固定が指定されると1号艇が十分な助走距離を確保してレーススタートを切ることができるので、逃げが成功する見込みが高くなります。その他レーサーのクラス(級別)が指定される場合、多くは1号艇に強い選手を配置して逃げが成功しやすい状況が作られています。そうすることでレースにベットして楽しむ側としては、「当てやすいレース」となり、レースへの注目が高まるだろう、という効果が見込まれます。
ボートレース場別のイン逃げ決着割合 競艇場によって20%超も違う!
さて、実際のボートレース場別の逃げで決着するレースの割合ですが、1年間分のデータでは以下のようになっています。
一番イン逃げ決着レースの割合が高いのが芦屋ボートレース場(福岡県)で、60.9%。逆に一番逃げが成功しないのが、戸田ボートレース場(埼玉県)で、その割合は39.7%となっています。
ボートレース場が異なると、逃げの成功見込み20%を超える差があるということが示されており、場所ごとのレース傾向を知っておくことが重要だということがわかります。
グラフ内の縦線は、全体の逃げ決着割合です。レース場全体では、52.4%というのが逃げが成功する割合となっています。
逃げの決着割合が低い戸田・江戸川(東京都)は、レース場の形状や環境が大きく影響しています。
戸田は水面が狭く、コーナーで回旋するときの幅を確保することが難しくなり、他のレース場に比べて特殊なレース傾向となっています。
江戸川は立地が特殊で、全国24箇所のレース場のなかで唯一河川の水面がそのまま使われています(他の水面は海・湖や人工プール)。その影響で、一年を通して風が強く波が高くなる傾向があります。上げ潮や下げ潮といった水位の変化の影響も受けやすく、1日のうちでも前のレースと後ろのレースで傾向が変わるなど、ボートレーサーにとっても難易度が高いレース場となっています。
戸田や江戸川の逆で、レース水面が広く、風や波が穏やかなレース場ほど、枠順の有利不利がレース結果に反映されやすく、逃げの成功見込みが高くなる傾向があります。
逃げ決着割合が高い芦屋はそういった枠順の優劣が影響しやすいレース場ですが、同時に企画レースの種類が豊富なレース場でもあります。進入固定が指定されるレース数も多く、走りやすい水面ということも加わって逃げの成功見込みが高いレース場として認知されています。
水質による影響は? 海水・汽水・淡水ボートレース決まり手
ボートレース場別のグラフでは、競艇場の名前の横に水面の種類を記載しています。
水面は塩分濃度が高い順に海水・汽水・淡水と分けられていて、名前のとおり海水レース場では海の水が使われています。淡水レース場は湖の水などミネラル分が低い水が使われている場所で、汽水レース場は使用されている塩分濃度が海水と淡水の中間にあたる水が使われています。
塩分濃度がボートにどのような影響を与えるのか、ボートレーサーでないとあまりイメージしづらいですが、よく水面が「硬い」といった表現でその水質の特徴が語られることがあります。塩分濃度が低いほど選手は「硬い」と感じるようで、淡水場は水質が硬くて水面から強い反動を受けることになり、ボートの操作感も変わってくるようです。
事実、塩分濃度によって水の浮力が変化するので、塩分濃度が高く水面から受ける浮力が強い海水面はボートが水に浸かる体積が少なくなり、逆に淡水はボートが水に浸かる体積が増えるようです。そのため、淡水では水からの反発を「水面の硬さ」として感じることになるのでしょう。
実際に水質ごとにレースの決まり手の割合を比較してみると、確かに海水の方が逃げで決着する割合が高く、ボートレーサーが比較的乗りやすい(水質が硬くないから)ということが数字に現れていると考えられます。
水質 | 逃げ決着率 | 差し決着率 | まくり決着率 | まくり差し決着率 | 抜き決着率 |
---|---|---|---|---|---|
海水 | 53.7% | 13.0% | 14.5% | 11.3% | 6.7% |
淡水 | 52.5% | 12.9% | 15.7% | 11.4% | 6.7% |
汽水 | 49.2% | 13.7% | 17.1% | 11.9% | 7.1% |
全体 | 53.7% | 13.1% | 15.5% | 11.3% | 6.7% |
とはいえ、これは水質別で分類したときの全体的なレース傾向です。
水質だけで考えると海水と淡水の中間である汽水のボートレース場で逃げ決着率が低くなっているのは、単に水質がレース傾向に影響しているのではなく、汽水のレース場が少なく(5場)江戸川など特徴的なレース場が含まれることが原因だと思われます。その他にも、淡水レース場に逃げ成功率が最も高い芦屋と最も低い戸田の両方が含まれていることなどを考慮すると、まずは各レース場の特徴を重視して水質はその次、と考えていた方がよさそうです。
水質を基準にして覚えておくとすれば、
- 海水レース場は基本的にイン逃げが決まりやすい。ただしレース水面が狭い平和島・鳴門という例外は要注意
- 汽水・淡水レース場のうち、芦屋・尼崎はレース水面が広くイン逃げ決着率が高い。その他は海水面と比べるとイン逃げが決まりにくくなる傾向あり
- 水質に関係なく、戸田・江戸川はレース傾向が他のレース場と大きく異なるので注意
といったところでしょうか。
待機行動時間の変更について ボートレース福岡
気候条件で変わるレース傾向 覚えておきたい水温・波・風の影響
レース場や水質によるレース傾向を見てきました。ここからは、水温・波・風といった気候条件の影響を見ていきます。
気候条件ごとにレース決まり手の割合を見ていきますが、最終的な結論を先に述べておくと、落ち着いた気候条件ならイン逃げが決まりやすい、ということに尽きます。
特に風向きについては、ボートレース歴が長い方ほど先入観があるかもしれません。データに基づいた傾向を知って、競艇予想に役立ててください。
寒ければイン逃げは増えるのか 水温からレース決まり手データを見る
最初に水温によるレース決まり手の割合を見てみます。
レース全体の1%弱(0.8%)で「恵まれ」の決着が発生しますが、それを除いて「逃げ」「差し」「まくり」「まくり差し」「抜き」の割合をグラフにしています。
データ上、はっきりとした傾向を見つけることは難しそうですね。
暑すぎず寒すぎずといった温度帯(12℃ – 22℃)で縦線を引いて3分割していますが、どちらかというと中央のエリアでイン逃げ決着が高くなるということは言えるかもしれません。
水温について一般的に言われているのは、温度が低くなるほどモーターの回転数が上がりやすくなり、ボートの速度が上がるということです。
事実、ボートレース場のレコードタイムはほとんどのケースで気温が低い時期に達成されており、水温が低いほどボートの速度が向上することは確かです。
ボートの速度が上がるなら、ボートをスピードに乗せるまでの距離が短縮でき、インコースの逃げが有利になりそうです。ただし、全レース場で見たときのデータではそういった傾向は出てきませんでした。
全体では明らかな傾向は出てきませんでしたが、レース場別の水温によるレース傾向を見れば傾向があるかもしれません。全体のレースデータを水温別に並べたときに、例えばナイターレースを開催するレース場の傾向が水温の低いところに現れやすくなるといったことが発生します。桐生レース場のレース傾向が水温の低いところに反映されすぎている、といったような可能性は排除できません。
とにかく、今回の分析ではそこまで深入りせず、全体のデータでは水温がレース決着に与える影響は小さいと言っていいだろう、というところまでにしておきます。
ひとつ、気温の高いところで「抜き」の割合がぐっと上がっているのは水温が影響するレース傾向を示しているかもしれません。
冬の寒い時期のレースでもレースを終えた競艇選手は汗だくで戻ってくる、と言うほど体力勝負のボートレースなので、気温が上がりすぎるとスタミナ切れでレース順位が変化するということも多くなると考えられます。
ボートレーサーの体重や減量の仕方によっても、夏に強い選手・そうでない選手というのがあるかもしれませんね。
ここから後のグラフでも、同じく対象のレースが100件に満たない場合にはプロットする対象から外しています。
波の高さによるレース決着への影響 テクニカルなレースの決まり手
次に波の高さによるレース決着傾向を分析します。
水温のときと同じく、恵まれ以外のレース決着割合を0cmから8cmの波高ごとにグラフにしています。ただし、このデータからは波高の発表が特殊な江戸川レース場のデータを除外しています。
こちらは水温と違ってはっきりしたレース傾向が現れています。
イメージ通りですが、波が高いほどイン逃げの決着率は下がります。一番逃げの成功割合が高いのが1cmの波のときで56.5%、それが7cmの波になると43.5%まで落ちます。
イン逃げ決着率を波が2cm・5cmのところで分割すると、
0 – 1cm 56.3%
2 – 4cm 51.5%
5 – 8cm 46.4%
となっており、波の高さが影響を与えていることがわかります。
グラフは8cmまでしかプロットしていませんが、参考までに、8cmを超える波の場合のイン逃げ決着率は36.7%でした(江戸川レース場のデータは含みません)。
逃げ以外の傾向としては、波が高くなるにつれて「抜き」の決着割合が高くなるということが見て取れます。
抜きの割合は、波が0cm・1cmのときが5.9%であり、グラフ内では波が8cmのときが最大で12.5%。これは「まくり差し」の12.1%を超える割合です。
グラフは、波が高くなるほどコースの難易度が上がり、枠順の有利不利よりも別の要素が重要になるということをよく表しています。テクニカルな要素が求められるほど、ボートレーサーの技術やレース場・天候条件への慣れといった要素が着順に反映されます。
「抜き」決着割合の推移が示しているように、波があるときには選手の力量を考慮する比重を高めたほうがよさそうです。特に波が高くなりやすいレース場では、その水面に慣れている地元選手を、そのときの波高によって重視するという戦略が有効です。
- 波の高さが、2cm以上・5cm以上でイン逃げへの信頼度を調整するのがいい
- 波が高くなるにつれて、実力のあるボートレーサーや地元選手を重視する
といったことを予想のファクターとして活用することをお勧めします。
追い風向かい風・内向き外向き イメージに惑わされない風速によるレースへの影響
天候条件の最後に、風の影響を分析します。
ボートレース場によって、吹きやすい風の向きや強さという傾向があり、より詳細のレース傾向はやはりレース場別で分析する必要があります。バックスタンドの形状や周りのビルの影響で、レース場によって特定方向の風に大きな影響を受けたり、逆に全く影響を受けなかったりということがあります。
そうは言ってもまずは全レース場のデータで特徴を掴みましょう。
ということで、風向きをボートが進む方向(水平方向)と、それと垂直な方向の2つに分けて、風の強さごとのレース決着傾向を見ていきます。
まずは水平方向の風の影響です。スタートのときに1マークに向かって進む方向を正として、進む方向と逆向きに吹く風(向かい風)をマイナス、進む方向に吹く風(追い風)をプラスにしています。
水平方向の風の強さごとのレース決着はこのようになりました。
0m/sのときにイン逃げ決着率が最も高く、56.1%。追い風と向かい風を比較すると、2m/s程度までの強さであれば若干追い風の方が逃げ成功割合が高くなっていますが、それを超えると追い風の方が逃げ成功割合が下がる幅が大きく、プロットしているなかでは+5m/s(追い風)のところが44.4%と一番低くなっています。
逃げ以外の決まり手だと、「差し」が追い風と向かい風で大きな違いが出ており、向かい風のときに11 – 12%程度の差し決着割合が、追い風になると一気に上がり、+5m/sのところでは17.7%まで向上しています。
「まくり」や「まくり差し」は差しほどの強い傾向は示していませんが、まくりは逃げと逆の傾向、まくり差しは差しと逆の傾向が見て取れます。
垂直方向の風の影響はどうなっているでしょうか。
スタートの向きと垂直な方向で、1枠から6枠に向かって吹く内から外への風をマイナス、6枠側から吹く外から内への風をプラスとして、風の強さごとにボートレースの決着割合を示しています。
垂直方向の場合の逃げ決着割合についても、大まかには平行方向と同じく、風が弱いときにはイン逃げが強く、どちらの方向でも風が強くなると逃げで決まる率が下がる、という結果になりました。
0m/sより周辺の±1m/sの方が逃げ決着率が高くなっているのは少し意外でしたね(54.8% – 52.8% – 54.5%)。これは、0m/sのところに水平方向だけに風が吹いているレースが含まれており、水平方向に吹く風が逃げの確率を下げる方向に影響していることを示しています。水平方向だけに風が吹いているレースを除外する(風がどの方向にも吹いていないレースのみを対象にする)と、逃げ決着率は55.5%まで上がります。
内側・外側の違いで見ると、外から内への風の方がイン逃げ成功割合の下がり幅が大きく、内から外への風よりも全体的に低くなっています。同じ風の強さで比較すると、1 – 5m/sの全てのケースで外から内へ吹く風の方が逃げ決着割合が低く、一番低い+5m/sのところで44.3%となっています。逆に内から外への風の場合、プロットされているなかで一番強い箇所でも49.0%。-1 – -4m/sの範囲ではすべて50%を超えており、影響は限定的であることがわかります。
逃げ以外だと、風が強くなったときに「まくり」が逃げに代わって台頭する様子がグラフに示されています。水平方向のときもこういった傾向はありましたが、垂直方向の風の方が風が強くなったときにまくり決着が増える傾向が強く出ています。他の「差し」「まくり差し」が、外から内の風のときは増えて逆のときは減る、という弱い傾向があることも影響して、「逃げ」「差し」「まくり差し」が弱くなる内から外への風が強いときには「まくり」の割合が23.2%(-5m/s:外向き)まで向上しています。
水平方向と垂直方向で比較すると、水平方向の場合は風速が小さくても逃げの成功割合に影響を与える度合いが強いということが確認できます。これは恐らく、ボートレーサーのフライングに対する意識に影響があるのではないかと思っています。平行方向の場合は少しの風速でもスタートに対して慎重になることで、逃げ以外の可能性が高まるのかもしれません。
風速が強くなると逃げ決着の割合が小さくなることはどの風向きでも同じですが、垂直方向の内から外への風だけはその影響が他に比べて小さい、ということも覚えておいたほうがいいかもしれません。
風の影響についてまとめると、
- どの風向きでも(追い風であろうと)風速が強くなれば逃げ決着の発生率は下がる
- 水平方向の風は弱くてもイン逃げ発生率を下げ、それに比べると垂直方向の弱い風の影響は小さい
- 内から外への風のイン逃げに対する影響は、他の風向きに比べると小さい
- 1マークの回旋に入る向きへの風(追い風・外から内への風)は「差し」決着の割合を向上させる(特に追い風)
- 垂直方向の風が強くなると「まくり」決着の割合が増える
のようになります。
レーサーの実力がイン逃げにどう影響する? 2号艇の強さは重要なのか
競艇場別と天候条件別でボートレースのイン逃げ決着の傾向を見てきました。最後に、選手の力量と逃げ成功見込みの関係を見ておきます。
ボートレーサーの勝率とイン逃げ成功見込み 2-4号艇の実力は関係ない?
当然ですが、1号艇のレーサーが実力者であるほど、逃げの成功確率は高まります。
ボートレーサーの強さを示すわかりやすい指標に「勝率」がありますが、1号艇に入った選手の勝率に応じたイン逃げ決着割合はこのようになります。
グラフは、「1号艇が強ければ勝つ」ということを、右上がりの推移で明確に示していますね。
ここまでは当たり前のグラフなのですが、次にこれを2号艇の選手勝率でプロットしてみます。1号艇の選手の強さはひとまず置いておき、2号艇のボートレーサーが強いかどうかで逃げの成功確率にどのような影響があるかというグラフです。
意外なことに、2号艇の選手の強さ(勝率)が逃げ決着割合に与える影響というのは皆無のように見えます。
縦軸が逃げが成功する見込みで、この記事の最初の方で見たように全レースでみたときのその確率は52.4%です。そして、2号艇の選手が強かろうと弱かろうと、その成功見込みはその52.4%付近で変わることがないということが示されています。
直感的には受け入れづらい結果ではないでしょうか。
これまで、2号艇に強い選手が入ったならば1号艇の逃げをなんとか阻止しようとしてくれるのではないか、と期待して予想を組み立てていた方は今すぐ考えをあらためなくてはいけません。データ上あなたはすべての2号艇から完全に裏切られています。
同様に、まくりを期待する3号艇、ダッシュスタートからのまくり差しを期待する4号艇についてもプロットしてみましょう。
驚きです。
3号艇・4号艇も1号艇が逃げることに何の影響も与えていないようです。2号艇から4号艇のレーサーを勝率で評価してイン逃げ阻止を期待してきた多くの方は、2号艇だけでなく3号艇・4号艇にまでも裏切られました。あなたの期待は何の意味も持たなかったのです。
これ以上はグラフが見辛くなるだけなのでやめておきましょう。
イン逃げ阻止に特化した2号艇 勝率には現れないレーサーのファクターは使える指標なのか
逃げの成功見込みを考えるときによく使われる指標として、対象のレースに挑む時点での1号艇の逃げ実績(過去レースで逃げを成功させた実績)や2号艇の逃げ阻止実績(2号艇に入ったときに1号艇の逃げを阻止した過去レース実績)といったものがあります。
そして、それらを組み合わせた指標として、
1号艇の逃げ実績+2号艇の逃げ阻止失敗実績
というものもあります。1号艇が逃げる確率(%)に、2号艇が1号艇を逃がしてしまう確率(%)を足すことで、1号艇と2号艇のパワーバランスから逃げ成功見込みを予測しようという試みです。
これまでの話しの流れだと1号艇の逃げ成功確率に2号艇の強さは関係ないようでしたが、強さを示す勝率ではなく2号艇に入ったときの1号艇の逃げに対する実績値を使うということなので、違う結果が得られるかもしれません。
2号艇に入ったときに1号艇に対してどの程度プレッシャーを掛けるかというのは選手の性格や戦略によって違うということが予想されます。自分が旋回する余裕を犠牲にしても1号艇に挑んでくれるボートレーサーかどうか、ということは確かに勝率には現れないファクターなのかもしれません。
以下は1号艇の逃げ成功率と2号艇の逃げ阻止率を5%刻みで集約して逃げ決着割合をプロットしたものです。
1号艇のレース時点での逃げ成功実績が右上がりのグラフになるのは当然です。その逆で、2号艇のレース時点での逃げ阻止率が高ければ1号艇の逃げが成功せず、低ければ逃げが成功しやすいという傾向が見られるとよいのですが、どうでしょうか。
理想はXの形が示されるとよかったのですが、あまりきれいな傾向は出なかったようです。特に逃げ阻止率(横軸)が15%から55%の区間では、逃げの決着割合(縦軸)が52.7%から51.9%となっており、逃げ決着に対して影響を与えていないことがわかります。
ただし、55%を超えたところからは2号艇のちからが発揮されているようで、明らかに逃げ決着割合に影響を与えていることがわかります。
ここからわかることは、平均的な逃げ成功確率(52.4%)に対して明らかに高い逃げ阻止率を実現しているボートレーサーが2号艇に入れば、それは1号艇の逃げ成功見込みを下げる方向に働くが、そうではない選手が2号艇に入ったときは2号艇の実績は考慮しない方がいい、ということです。
2号艇の勝率を調べたときよりはいい結果が得られましたが、限定的なケースでのみ使える指標であるようです。
もう一つ2号艇の逃げ阻止率がかなり限定的にしか使えない理由があります。
このグラフには母数が示されていないので、2号艇の線だけを見ると本当に平均が52.4%に収まるのか疑問を抱くかもしれません。実際のところ、2号艇のデータ数は逃げ阻止率が30%から45%のところに集中しており、2号艇レーサー全体の8割がその区間に収まります。結局2号艇の逃げ阻止率が55%を超え他状態で行われるレースは、全体で見ると数%に留まり、そのときしか指標を有効に使えないということになります。
「1号艇の逃げ成功実績+2号艇の逃がし実績(逃げ阻止率の逆)」という指標でいうと、2号艇の逃がし実績がある程度高い場合(=逃げ阻止実績が低い場合)は逃げの結果に影響を及ぼさないので、万能な指標とは言えません。
実際に、私は指標について評価するときにまず相関関係(ピアソンの相関係数)を見ることが多いのですが、
①1号艇の逃げ成功実績
②1号艇の逃げ成功実績+2号艇の逃がし実績
の2指標を、逃げが成功したかどうかの結果に対して係数を取ると、①が0.294、②が0.257となり、逃げ成功実績を単体で使ったほうが逃げが成功する見込みを説明できるという結果になりました。余計なことはしないほうがいい、ということですね。
- 逃げの成功見込みには、1号艇ボートレーサーの強さ・逃げ実績が強く関係するが、2号艇以降の選手の影響は限定的
- 特に2号艇以降のボートレーサーの強さを表す勝率は、単体で用いると逃げ決着の結果に影響することはない
- 2号艇の逃がし実績(逃げ阻止実績)については、一定の範囲でのみ有効な限定的な指標となる
イン逃げ分析のまとめ BKC逃げ成功見込みをあなたの予想に役立てる
この記事では、1号艇の逃げが成功する見込みがどのようなファクターに影響されるのかを見るために、いくつかの変数と、レースの逃げ決着割合の関係を見てきました。
ボートレースの展開を予想するにあたって、1号艇の逃げが成功する展開で予想を組み立てるか、失敗する展開で予想を組み立てるのかは非常に重要なポイントです。
逃げ成功に影響する要素や、意外に影響しなかった要素といったものを紹介できたかと思います。
そして、紹介した要素や、今回は紹介しきれなかった要素を総合的に使って算出しているのが、BKCがデータ分析ページで掲載している逃げ成功見込みです。この指標がきっとあなたのボートレース予想に活用できると信じています。
あなたがボートレースをより楽しめるよう、BKCのデータ分析ページが貢献しますように。
ご意見・ご要望など、ぜひこちらの問い合わせフォームからお送りください。ご指摘であったり、こんな分析データを見たいといった要望など、何でも歓迎します。